〈SLE体験談その3〉

皆さんこんにちは。あっという間に今年もクリスマスが過ぎ、もうすぐお正月ですね。
今回は、SLEそのものの体験談というより、病院に入院して感じたことについて。


体験談その2の終わり、つまり12月25日からさかのぼること2日前、夜の出来事でした。まだ治療が始まる前で、大部屋から出るのは車椅子を看護婦さんに押してもらっていくトイレの時ぐらいだった頃です。廊下の向こうの方から何やら明るい歌声が聞こえてきました。うすらぼんやりとした頭で「おや…?」と耳を澄ましていると、どうやらクリスマスソングのようです。その歌声がだんだん近づいてくるにつれて、はっきりと歌詞が聞こえてきました。
あわてんぼうのサンタクロース、クリスマス前にやって来た♪…」。言わずと知れたあの曲です。
やがて病室に「やって来た」のは、いわゆるサンタの衣装(…してたと思う)を着た二人組(…だったと思う)の若い女の子たち。私の元にもやって来て、プレゼントを渡してくれました。それは、可愛いサンタのイラストと『メリークリスマス!このひとときが、あなたの安らぎになりますように。』と手書きされたメッセージのクリスマスカード。裏には『看護学部 学生一同』とあり、彼女たちはつまり「白衣の天使の卵」だったのでした。
その時、私は彼女たちに何と言ったかな…?「ありがとうね」ぐらいしか言えなかったと思います。クリスマスソングだと気付いたあたりから、もう涙腺ウルウル状態だったと思うから。

病室というのは、とても閉鎖的な特殊な空間です。そして変化が少ない。もちろん、昔に比べたら、テレビはあるし外の状況は知ることは出来ますが、自分はそれから疎外しているという感覚はひょっとしたら、刑務所にいる方などと同等かもしれません。そんな中で、「あぁ、自分にもサンタさんが来た」というささやかな一瞬の喜びは、とてもとても、とても大きいものです。
私は今までどうも、御馳走たらふく食べてケーキ食べてプレゼントを交換してはいおしまい!というスタイルに食傷気味で、子供もそんなに興味がない方だし…とクリスマスに消極的でした。中東でのキリストさんの誕生を祝う日が北欧の冬至の祭りとごっちゃになって、ツリーを飾り真っ赤な衣装のサンタさんがプレゼントをくれる日になり、きっとキリストさんが今見たらびっくりするだろうけど、何となく「きっといいことがあるかも」という希望の火を心にともしてくれる、そんなイベントがあるのは、とてもいい事だと実感した去年のクリスマスでした。

今年も、彼女たちはきっと病室にひとときの安らぎを届けに来たのでしょうね。もちろん、大学病院という大きいところだからできることではありますが、これからきっと毎年、クリスマスが来るたびに私は、彼女たちのことを思い出すと思います。実は退院前に、彼女たちに再び会うことになったのですが…その話はまた、後日。

ではまた。