〈SLE体験談その8〉

 先日の池江選手の白血病の公表に続き、タレントの堀ちえみさんの舌癌の公表・手術と、このところ有名人の闘病が話題になっていますが、特に堀さんのリウマチ(これも実は膠原病すなわち自己免疫疾患の一種です)と舌癌の同時罹患が気になります。
 手術後の投薬治療はどうなるんだろう…?
 一方では癌を叩くために免疫を強化しなくてはならないし(先の本庶先生の治療法ならば)、リウマチを鎮めるには免疫力を下げなくてはならない。現にリウマチの薬で免疫を抑制していたために、その副作用として口内炎ができやすく舌癌を見落としたのならば、最新の免疫療法は使えず抗がん剤放射線治療のみ??シロウト考えではありますが、私にとっては他人事では済まされないだけに人一倍今後の推移が気になります。
 ただお二人に共通して言えるのは、病気に気負けしない覚悟の強さと明るさ!見習いたいものです。

 さて、体験談の続き。

 入院中にお世話になるのは看護婦さんばかりではありません。絶対的に欠かせないものの一つに「食事」があります。それを日々支えるのが管理栄養士さんと調理スタッフの方々です。
 食事の度に献立カードが付くのですが、それには病室と個人名、カロリーや塩分・タンパク質の量、ご飯の状態と量、アレルギー等の為の禁忌食品、固形食か流動食か、糖尿病食か普通食か…などなどなど事細かに書かれており、病気用のカルテとは別にもう一つのカルテともいうべきものでした。もちろん、「本当のもう一つのカルテ」は担当医の事細かな指示も書かれているようで、私も入院当初は腎症の為タンパク質制限があったようですが、献立カードには普通食と書かれていたため気付きませんでした。
 それに加えて、朝食がパン食か和食か選ぶことが出来、普通食の方は数日前に主食がある程度選べるようになっていたり、私の様に白飯をお粥に変えてもらうことなどが出来るなど、個人的な好みもある程度反映出来ました。その上で食欲が出るようにメニューの色どりもちゃんと配慮され、毎食の様に酢のものが添えられていたり、海藻や豆がふんだんに使われていたり、普段の食事作りではここまできちんとできないよ~と思わずため息が出るようなバランス設計で、毎食感謝しながら完食していました。
 しかも、クリスマスはもちろん、正月三が日や七草など、行事がある時はそれにちなんだメニューが出され、小さなメッセージカードが付いて来るのです。前回入院時に出産お祝い膳が出た記憶がありましたが、四季のイベントごとにも出されていたのにびっくりでした。これももっとも、大学の附属病院ということもあっての事でしょうが、この食事を食べるためならまた入院してもいいくらい!(←おいおい…)です。

 その、メッセージカードの送り主である「栄養科」の方々の調理しているところはどこだろう…?
 この疑問を、車椅子を押してもらって病棟の外の景色を見せてもらった時に看護婦さんに聞いてみたところ、「地下一階にあるんですよ」と教えてくれました。毎回500食(確かそう言っていたと思う)余りもの数を作っているとか。

 ひえ~っ!500食!!
 外来でごった返す一階のその下で、日々黙々と調理をして下さっている方々がいる…。

 一部看護婦さんやドクターの分があるとしても、単純に500食×3食の日々の献立を立てている管理栄養士さん。一食の献立だけでアップアップしている落第主婦にとっては、栄養士さんの頭脳の一部でも分けて欲しい(笑)。
 そしてその一つ一つを間違いがないように気を使い、作っている調理スタッフの方々。仮に取り違えでもしてアレルギー反応をおこしたりでもしたら、命にかかわることだってあり得るのですから。仕事始めは恐らく午前3時ごろでしょうか。その時間になると搬入のトラックらしき物音がするのを私は、毎晩のように聞いていました(睡眠障害で目が冴えてたため)。搬入即調理ではないでしょうが、とにかく、朝早い仕事であるのは間違いありません。

 本当に毎食「ありがたい」の一言でした。
 それ以来、献立のリクエストカードの裏に、ちょっとしたメッセージを何回か書いて返しました。直接、皆さんに届いたかわかりませんが、少しでも気持ちが伝わればいいな、と思って。退院前のリクエストカードには「ありがとうございました」と書きました。ただ、年越しそばとカレー(退院日の昼食)を食べはぐったのが心残り(笑)です。

 そして。

 後日知りましたが、地下一階ではもう一つ、大事な部屋がありました。
 「霊安室」、です。

 安らぎを作り出す人と、安らぎになられた方のいる場所。

 天使と安らぎの国は、足の下にも…あるのだということ。それを知った入院生活。

 それが、今も定期検診に行くたびに想う、私のとって病院の「地下一階」の姿です。

 体験談その9に続きます。