〈SLEとノーベル賞

 先月の朝日新聞デジタル版の記事で、卓球女子元日本代表であの福原愛さんとダブルスを組んだこともある若宮三紗子さんが、私と同じ「全身性エリテマトーデス(SLE)」であると公表されていました。幸い軽症で推移していたようですが、今年3月の現役引退まで、病気を抱えながらの選手生活はさぞかし大変な事だったろうな~と思います。
 ちなみに、かのマイケルジャクソンさんもSLEだったということ、皆さんご存知でしょうか?


 今回はちょっと長文となりますが、私のお付き合い(?)相手の「全身性エリテマトーデス」について少し紹介します。

 まず名前から。
 略称のSLEとは
システミック(=全身性)
ループス(=狼。狼に噛まれたようなと称される皮膚症状より)
エリテマトーデス(=紅斑症状)
の頭文字のことです。
 人間が持っている免疫のシステムが何らかの要因によって異常をきたす「自己免疫疾患」の中で、「膠原(こうげん)病」の分類に入る国指定難病49番の病気です。
 難病登録患者数が約6万人、全体数で言うと約10万人の推定患者がいるとされます。

 病気の仕組みは、ごく簡単に言えば、「体内の正常な細胞」を「自身の免疫細胞」が暴走して「敵」と認識してしまい、抗体を作って攻撃してしまうために起こります。
 食物アレルギーや花粉症はいわば外部から入って来る敵に対して免疫細胞が暴走する病気ですが、SLEは身内を攻撃しまくるのですからたまりません。
 結果どんな症状が出たか言うと、私の場合は、関節が痛くなって歩けなくなるわ、熱は出るわ、食欲がなくなるわ、腎臓をやられて(ループス腎炎と言います)蛋白尿は出るわ、睡眠がとれないわ…など、一時もーろーとしてました。人によっては神経症状や顔面の蝶形紅斑、心臓に症状が出る方もいるそうです。
 詳しくは後日体験談をアップしますね。

 現在行われている治療は、主にステロイド免疫抑制剤の服用による炎症を抑える対処療法であり、根本治療はまだ確立していません。私の場合は、血漿交換(まあ、いわゆる透析と同じと考えてください)も2週間に1度、行っています。
 炎症の数値は徐々にですが下がってはいるのですが、副作用の強いステロイドをもう少し減らすにはまだまだ時間がかかりそうです。
 ステロイドの副作用で骨粗鬆症になりやすいので、月1回の予防薬も服用。これの服用中は歯医者で歯を抜いたりするとき注意が必要となります。

 日常生活で気を付けなければいけないのは、何といっても紫外線と感染症!。
 紫外線を多く浴びると体内で病気に悪影響を及ぼす物質が出来てしまうため避けるようにとのこと。
 感染症は、免疫抑制…つまり、暴走する免疫細胞を無理やり抑える=免疫力を下げることにより症状を和らげているので、外敵に対する抵抗力が弱くなっているため、注意が必要なのです。
 これにより、土いじりはご法度、雑菌と人混みは避けるように、風邪は引かないようにとのこと。体内に住んでいる特殊な常在菌が暴れないように、エイズ患者の方が服用しているのと同じ薬も飲んでいたりします。

 ところで余談ではありますが、この度ノーベル賞を受賞した本庶先生の授賞理由は
「免疫抑制の阻害による(わかりやすく言うと、『免疫の働きの低下を防ぐ』)がん治療法の発見」
だそうです。
 ちょっと難しい話になりますが、先生の発見された「PD-1」というタンパク分子は、免疫細胞の一種「T細胞」の攻撃のブレーキ役を果たすスイッチであり、がん細胞はこのスイッチを押すことで攻撃をやめさせ、身を守るのだとか。これを押されないようにカバーするのが、あの抗がん剤「オブシーボ」の効く仕組み。
 テレビでこの解説を聞いていておや?と思った私。
調べてみると、「PD-1」が欠如したマウスは、系統によりSLE様の症状を示すものがいるそう(京都大学大学院医学研究科免疫ゲノム医学本庶研PD-1のHP資料より)で、先生の研究は「抗がん剤の開発に寄与した」と同時に、「免疫疾患の仕組みの解明の一助を担っていた」のでした。ノーベル賞受賞の研究が自分の病気と無関係ではないことで、遠い存在だった「ノーベル賞」が何だかすごく身近なもののように感じてしまいました。
 ただ、じゃあ単純に「PD-1」の働きを強める薬を開発すれば暴走を止められるじゃないか?とシロウト考えに陥りたくなりそうですが、免疫疾患への応用の方が、がん治療より実は「さじ加減」が難しいようで…今後の研究が待たれます。

今日はこの辺で。次回は体験談その1かな~。