あひるのひとりごと

国指定の難病であるSLE(全身性エリテマトーデス)患者だけど、精一杯生きてます。大好きな植物さんのこと、ルーマニアの伝統楽器パンフルートのこと、夢の実現への足取りや、そのほか想うこと…書いています。

大きな麦の物語 その3「大麦栽培スタート」

 家に麦がやって来た!

 

 

 まず、注文した令和元年度産「キラリモチ」一キロが家にやって来ました。保存していた六条裸もちの種子(在来の品種もしくは「ダイシモチ」だと思う)と大きさを比べてみると…明らかに大きい。何だかワクワクしました。でもそれだけ地力が必要なのかな、収穫も遅いのかな?など心配もあり、「大麦・育て方」でネットで調べても、具体的な例が出てこない!動画もほとんど機械播きのものばかり、しまいにはウサギや猫用の画像しか出てこない始末(苦笑)。

 なので、里芋収穫後の90センチ畝に2条溝切2センチ程度、種子の播種間隔1~1.5センチ、覆土2センチ、今年の畝の長さは5メートルで種子量は100gあまり、という感じで11月3日文化の日に播いてみました。前日は雨が降ったので、程よい水分量だったと思います。最後に足で鎮圧。

 

 続いて、令和二年度産「ユメサキボシ」一キロが契約完了し、やっと家にやって来ました。第一印象はやっぱり「大きい!」。キラリモチとどっこいどっこいといったところですが、若干こちらの方が上かも。キラリモチに遅れること19日後、11月22日に違う圃場へ同じように播種しました。時期としては少々遅くなってしまいましたが、何とか梅雨前までに収穫できるように育ってくれるよう願うばかりです。

 

 〈補足〉 後日「10センチ間隔で数粒蒔く」という説明したサイトや本を発見。厚蒔きだったかな…?

 

 

 大麦よ復活なれ

 

 

 古来より大切にされてきた五穀といえば「米・麦・アワ・ヒエ・豆」ですが、こと栽培や料理法に関する情報はというと、それぞれかなりの温度差があるなぁという感は否めません。

 

 米はそれこそいくらでも栽培法に関する本は巷にあふれているし、料理法は言うまでもありません。

 アワやヒエも、雑穀ブームに乗って栽培マニュアルも料理も現在はそこそこあります。ブームになる前は鳥の餌扱いでしたが、雑穀米のおにぎりも今やコンビニで買える時代となりました。

 豆といえば大豆もしくは小豆ですが、大規模栽培はプロに任せるとして、料理といったらキリがないほどあります。ちょっとジャンルが違いますが、若どりの大豆はご存知の通り枝豆のことです。

 そして麦ですが、小麦はの方はこと料理に関しては米をしのぐ勢いですし、大産地で近年どんどん品種改良が進み、栽培技術も向上して生産量が増えているようで、パンやうどんなどが大手メーカーの商品でも国産小麦を使ったものがぐんと増えました。町のパン屋でも新規開店するところはたいてい「国産小麦使用」ののぼり旗を上げています。また、グルテンフリーの波に乗って、古代の原種麦も復活の兆しがあります。

 

 …ところが、そこからスコーン!とこぼれ落ちているのが、大麦。

 

 まず、栽培に関する一般書が、ない。

 

 もちろん、プロ向けの栽培マニュアルもネット上にあるにはあるのですが、「一反当たり何キロ種子を蒔け」と言われても、アマにはわからないわけです。知りたいのは「じゃあ、種子と種子の間は何センチ離せばいいの?」ということですから。なので大麦そのものの生態がわかる一般書が必要を探したのですが、「雑穀の育て方」や「野菜の育て方」の中には記載がないか、あったとしてもほんの数ページ割いているだけで、ましてや小麦は載っていても大麦はない。自給系農家や有機農家向けの本でも、「大麦?あぁ、緑肥に使ったりマルチ麦には使うけど、あれって適当にバラまいておけばいいんでしょ?」ぐらいの取り上げ方。載っている利用法もせいぜい自家製麦茶程度にとどまっているが故、食用として積極的に作付けする人は少なく(もっとせめて裸麦の「むぎこがし」が自給系農家の間に広まって欲しいものだと思うのですが)小麦の汎用性にはなかなか勝てないのが現状です。

 

 そこでようやく見つけたのが「ムギの絵本」(農文協2010年版)というもの。児童書ではありますがそれ故わかりやすく、著者が麦の育種の先生だけあってなかなか詳しく書かれています。

 また「小麦一トンどり」(農文協2017年刊行)には最新の栽培法が書かれていて、大麦にも応用できそうです。幼苗を踏む「麦踏み」は知っていましたが、茎がが立って来てから行う「麦なで」は初めて知りました。

 そして、ユメサキボシの育種チーム責任者の方が手掛けた貴重な大麦と小麦の栽培マニュアル本「ムギの高品質多収技術」(農文協2013年刊行)。まえがきには「久しぶりに刊行される麦の一般的な栽培書になる」との文言が。今回資料を探してみて、アマの個人的な印象ではなく、業界の方々が自認するくらい大麦は一番置いてきぼりだったんだなあ、と思いました。その他には今、図書館でリクエストしている本が数冊ありますが、それらは皆書庫に入っているような昔の本ばかり。これから農業を志す人に向けた本が新刊されることを望みます。

 

 ただ、これらの本を慌てて探したのは実はキラリモチを播いてからのこと。きっちり勉強してから播けよ!とツッコまれそうですが…完全に泥縄ですね。

 

 さて、料理法についてですが、これまた大麦の情報が少ない。

 

 むろん、麦焼酎や麦みそ、各種ブレンド茶に欠かせないベースとしての麦茶やもちろん、ビールやウイスキーの「原料」としては無くてはならないのですが、昔からの「伝統的な民族料理」というと山梨の「おばく」や静岡の「とろろめし」ぐらいしか有名なものはないのです。近年「βグルカンが健康にいい。やせる」ともち麦ブームに火が着いたところでもち麦ないし大麦の「新作料理」の本は出されていますが…。

 

 それは何故か?

 江戸時代の農村部の食事は、白米のご飯より「ひきわり麦」や「えまし麦」といういわゆるぼそぼその麦飯がむしろ「主食」。そのため大麦の消費量はそれこそ多かったはずなのですが、美味しさよりも生きるために必死だった時代であり、「料理」として発展しにくかった…と私は推測します。「おばく」や「ととろめし」さえ恐らく贅沢な食事だったのだと思うのです。ちなみに、現在の麦ごはんに使われる「押し麦」が開発されたのは大正に入ってから、「米粒麦」はさらにその後のこと。

 貧しい農村部の食事の象徴のような存在だったため「麦飯=貧乏人」というイメージがありますが、これは日本にとどまらず海外でも同じで、大麦の方が普及は早かったのにも関わらず、のちに進出してきた使い勝手のいい小麦に食用としての地位が奪われ、貧しい人の主食や酒造原料、飼料としての存在に代わっていっています。料理法もスープやお粥、ピラフなど限られており、やはり名物と呼べるものは数少ない。

 

 ただ、麦芽モルト)はフランスパンの製造上に欠かせない素材の一つとなっています。そうそう、甘いものの少ない時代、日本では麦芽水あめは貴重な甘味料として尊重していました。海外でも例えば、アルセーヌ・ルパンの物語に「大麦糖のキャンディ」というのが出てきます。あと有名なのが麦芽飲料の「ミロ」ですかね。

 

 大麦利用の番外編としては、健康飲料として「大麦若葉の青汁」、そして食用以外で重要視されたのが牛馬の飼料としての存在です。おっと、麦わらのストローや麦わら帽子に使われているのも大麦だそうです。

 

 つまり、小麦のような華やかさ、稲のような神聖視はされないけど、じいーっと人類の生活を足元で支えてきたのが大麦なんですね。

 

 これからだぞ!大麦!!がんばれーっ!!!

 

 それではまた。